アズーリエクイン

EPISODE

山岳地帯の隅に抱かれるラルセン村には、静かな暮らしを好む人々が住んでいた。彼らの日常は、ある晴れた昼下がりに、突如として打ち砕かれる。空を裂く轟音と共に、神秘の生物アズーリエクインが現れたのだ。その姿は、青く輝く毛皮を風になびかせ、まるで幻のよう。村の若者トムは、その圧倒的な速さと美しさに心を奪われ、迷いなく追跡を開始した。

蒼々たる大地を駆けるアズーリエクインは、かの有名な風の伝説を体現しているかのよう。トムはその後を追い続けるが、彼の足は地上に縛られた人間のもの。やがて、彼は息を切らしながらも、高原の中央にぽっかりと穴が開いたような小さな湖に辿り着く。そこで、彼は息を潜め、その神秘的な生物が静かに水を飲む様を目の当たりにする。アズーリエクインは、その優雅な首を傾げ、清らかな湖の水を味わう。その光景は、この世のものとは思えぬ美しさだった。

その瞬間、トムの心には、これまでに感じたことのない感情が湧き上がる。それは、自然の中に生きる野生の生命の神秘と、その不思議な調和の美しさへの畏敬の念だった。彼は、アズーリエクインが静かに湖から離れるのを見送りながら、この一瞬の出会いが、これからの人生において消えることのない宝物となることを知った。